Stray Disonare〜冷徹なる幻想曲〜
エピローグ
「………」
『えーと……これをこっちの支払いに……で、ロード料金がこれだけ……燃料と食費が……』
ラミアを出発した二人は、シップで次の目的地に移動を開始していた。
イルは、維持費や交通費などを手元のコンピューターに数字を打ち込んでいる。
シグはだるそうにソファーに根っころがっている。
「なあ、イル」
『ん、何?』
唐突な質問に、イルは顔を向けずにそのまま言葉を返す。
「お前……後、何年生きたい?」
『……そうだね』
突然の質問に、イルは少し悩んでから答えた。
『いつ死ぬかなんて、結局誰だろうと同じだから……死ぬときにやり残しがなければ充分かな』
「……そうか」
シグはその返答に満足したのか、口元にわずかに笑みを浮かべた。
「じゃあ、あのじいさんはがんばるかもな。なんせ、とんでもないものをやり残してるからな」
『……ぷっ、そうかもしれないね』
イルは数字の打ち込みが終わったのか、コンピューターを閉じてシグに向き直った。
『……で、次のお尋ね者はこいつでどうかな?』
「おい……ウォンより高いぞ、賞金」
『だから狙い目なんだよ』
イルは高額の賞金を掛けられた犯罪者にチェックをつける。
「ったく……実際に捕まえるのは俺じゃないか」
『大丈夫だよ、いい相棒がいるから』
「……どこに?」
二人を乗せたシップは、青い水の惑星を目指していた。
22世紀――私のような人間にとっては、地獄のようになってしまった
今の人間は、誰もが私の言う事を戯言扱いする
人はコンピューターを恐れ、デジタル技術は過去の遺物と化し、封印されていった
これほど素晴らしい技術を、私は見す見す手放したりはしない
私の生きた頃の世界、それを取り戻すために、私は人間を捨てよう
世界を、あるべき姿に戻すために――
2110年5月4日 ウォン・ヘレナー
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