Seeker of existence




光也は薄暗い部屋の中にいた。

辺りを見回すと、食べる物や何に使うかわからないようなものまで……とにかく、色々なものが置いてあった。


「まさか……あの部室の下に、こんな空間があるとはねえ……」

光也はそのあまりの設備に呆然としていた。

耳を澄ますと、上で圭と恭介が誰かと話しているのがわかった。


(誰だ……?)

光也はさらに注意深く聞こうとしたが、さすがに詳しくは聞き取れなかった。

上からは、ガサガサと何かを探しているような音が聞こえてきた。


(やっぱり……俺を探しているのか? もし捕まったら……どうなってしまうんだろ……)

光也は、自分の心臓の鼓動が早まっているのを感じた。

やがて……物音が静かになり、光也はほっと息をついた。


少しして、圭と恭介が地下に降りてきた。

光也の姿を見ると、二人とも笑顔を見せた。


「何とか誤魔化せましたね」

「そやな、本当に何とかって感じやったね」

笑い合っていたのも塚の間。

二人は顔を見合わせると、急に真面目な顔になった。


「どうしたんだ? 急に真面目な顔になって……」

「実は、さっき来た人の事なのですが……」

「さっきの続きやね? さっきも言うとったけど、警察じゃないんなら一体何者だっていうん?」

「さっきの来客か……俺は姿を見てないから、何とも言えないな」

「さすがに何者かはわかりません。でも、少なくとも警官ではないと思います」

「何でそんなことがわかるんや?」

「それは……」

圭は恭介の質問に答えるように語りだした。


「ちょっと気になったんで調べてみたんですけど……実は、警察はこの前の不審者騒動……つまり、光也さんのことについては何も動いてないんです」

「じゃあ……俺の家に居た警察は何だったんだ?」

光也は、不審者を探している警官を見たことを話した。

それを聞いて、圭はまた何かを考えはじめたようだった。


「光也さんが言ったことが本当ならば……光也さんを、不審者としてではなく探している人がいる……と、いうことになりますね」

「なるほど……」

光也が尋ねると圭は頷いた。


「その人を見つけて接触することが出来れば……もしかしたら、何かわかるかも知れませんね」

「……そうやね」

それに賛同するように恭介はうなずいた。


「そうだとしても、どうやって探すんだ? さっきの奴を追うにしても、もう居ないだろうし……」

その言葉を聞いて、圭と恭介は固まった。


「………」

「そうでしたね……取りあえず、さっきの人を探してみましょう。ちょっと待っていてくださいね」

そう言うと、圭は部室に戻っていった。


「……何をしにいったんだ?」

「さてね。本人に聞くのが一番良いんでないの? 教えてくれればの話やけどねえ……」

恭介は軽い口調で言った。


(恭介は教えてくれそうに無いな……)

「わかった……そうする」


「とりあえず、なるべく外には出んほうがええよ」

「確かにそうだな……」


「そんじゃ……俺はひとまず寝るわ。どうも、最近寝不足なんよ」

「……授業はいいのか?」

光也は少し呆れたように聞いた。


「警報があったから、今日の授業はもう無いんよ……まあ、あったとしても出るかどうかは微妙やったけどな〜」

恭介は、光也が呆れているのも気にしないであっさりと言った。


「まあ寝るわ……そんじゃ光也くん、オヤスミー」

そう言って、恭介は地上に上がっていった。


(……俺も寝るかな)

なんとなく、光也は横になった。





しばらくして、光也は誰かに起こされた。

「光也さん、起きてください……」

「う…うん……?」

目を開けると、そこには圭が居た。


「一応、例の人の居場所わかりましたよ」

「本当か!?」

ふと気がついて、光也は時計を見た。

時刻は、夜の7時をまわっていた。


「もう、こんな時間なのか……」

「えぇ……恭介さんはもう家に帰りました」

「そうなのか」

「えぇ、僕も今日はそろそろ帰りますね。詳しいことは、明日話します。」

「了解」

そう言うと、圭は部屋から出て行った。

光也は扉が閉まったのを確認すると、再び深い眠りについた。





翌日、光也は雨の音で目が覚めた。


外を見ると、雨が滝のように降り雷も鳴っていた。

こっちの世界に来てから、一番ひどい天気だった。


「うわ……ひどい雨だな〜」

光也が外を覗いていると、扉がバンと音を立てて開いた。

そこには、全身を雨で濡らした恭介が立っていた。


「あー……びしょ濡れや……」

「……そのままじゃ風邪ひくぞ、大丈夫か?」

そう言って、光也は部室にあったタオルを投げ渡した。


「どうもなー」

恭介がタオルで頭を拭いていると、そこに圭が入ってきた。


「光也さんに恭介くん、おはようございます。今日はひどい雨ですねえ……」

「まったくだ……そういえば、今日は授業いいのか?」

「ええ、今日は休みですから」

圭があっさりと答えた。


「そういや……昨日の話、進展あったんやろ?」

恭介が尋ねると、圭が答えた。


「ええ、昨日来た人物の居場所がわかりました。やはり、警官ではありませんでした」

「そうやったんか……」

「今はおそらく、駅前のカプセルホテルに居ると思います……ついでに言うと、また今日もこっちに来ると思いますよ」

「じゃあ……待ってれば来るのかな?」

「おそらくはそうでしょう。事情を聞くなら、やはりその時ですかね」

「そやね……でも、教えてくれるかねぇ?」

「まあ……教えてもらう方法は、色々とありますよ」

圭と恭介は熱心に二人で色々と話し始めた。

なにやら……妙に顔が生き生きとしている。


その二人を、光也は呆然とただ見ているだけだった。


「そういえば……」

ふと気になって光也は尋ねた。


「そんなこと、どうやって調べたんだ?」

圭はにっこりと笑って一言。


「秘密です」

と答えた。


(う……なんだこの圧迫感は……!?)

光也は、圭の何かわからない強烈な圧迫感のせいで、それ以上深く聞くことはできなかった。


「ほな、今は待ちやな!」

三人は、昨日の男が来るのを待つことにした。





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