[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

Seeker of existence




学校に着くころには、すでに12時を少しまわっていた。

光也は注意深く部室まで行き、扉を開けた。


「ただいま」

光也が中に入ると、恭介が座ってお茶を飲んでいた。

素晴らしいくつろぎっぷりである。


恭介は、光也が来たことに気づくと湯飲みを置いた。


「光也くんおかえり~。どうやった? 収穫はあったんか?」

「ああ、多少は……」

そう答えると、恭介は少し驚いたような顔になった。


「マジか? もう見つけてくるとは早いねぇ……それで、どんなことだったん?」

光也は一息ついてから、商店街で聞いたことを話した。


「俺の世界にはゲートってものが無かった。だけど、こっちの世界では常識なんだよね? これはかなり決定的な違いだと思うんだ」

恭介はそれを聞いて、少し暗い顔になった。


「ゲートか……光也くんの世界には、ゲートが無いのか。羨ましい……」

「それで……ゲートって何なんだ?」

光也に聞かれて恭介はしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと語りだした。


「ゲートっていうのはな、局地的に色々な被害をもたらすものなんよ……」

「色々な……被害?」

「あぁ、大きな被害だと……『町の住人がゲートの出現と共にすべて消え去った』って、いうところもあったそうや」

「そんなものがこの世界はあるのか……」

光也が驚いていると、さらに続けて恭介は言った。


「それにな……原因は不明。しかも何が起こるかわからないときたもんだから、ゲートってのは恐怖の象徴みたいなものなんよ」

「……それって大変なことじゃないのか? 町の人が消失だなんて、ただ事じゃないだろ」

「まあな……だけど、大抵は小さな被害で終わるんだ。そんな大きな被害ってのは、めったに起こらない。それがせめてもの救いだな」

「それって……対抗手段とかは無いのか?」

「あればとっくにやっているさ……ここ最近、ようやく予測が立てられるようになったんや。でも、それも的中率が悪い……まあ、対抗手段って言ってもそんなとこよ」

恭介は、これでもう言うことは無いとばかりに話を打ち切ってしまった。

そして最後に一言言った。


「あと、それから……ゲート関連のことは圭には禁句だからな」

「何でだ?」

「あいつ……父親がゲートで消失した町にいたんよ。それで……父親はまだ見つかってない」

「え!?」

光也はなんとも言えない想いが込み上げてきた。


「圭に無駄に悲しい思いはさせたくないんよ。だから……ゲート関連のことは言わないでやってくれんか?」

「ああ、わかった……」

光也はそれしか言えなかった。





「あれ? 光也さん、帰ってきていたんですね……どうしたんですか、二人とも黙りこんで?」

さすがに、圭は少し不思議そうな顔をしていた。


「ああ、そういやご飯まだやったわ! 圭、お前もまだやろ? 買ってこよか?」

唐突に恭介は明るく言った。


「それじゃ、お言葉に甘えさせてもらいます。そういえば……光也さんもまだお昼食べてないですか?」

「え? まだだけど……」

「それじゃ、光也さんの分もお願いします」

「了解~! それじゃ買ってくるわ! ……光也くん、くれぐれもさっきのことよろしゅうな」

そう言って、恭介は扉を閉めた。


「さっきのこと? 何なんですか?」

圭は、再度不思議そうな顔をして聞いてきた。


「え? えーと、それはだな……『昼飯は俺が買ってくるから、晩飯は自分で買ってこいよ~』という話をしてたんだよ」

光也は困りながらも、ゲートのことを圭に言うわけにはいかないと思い嘘を答えた。


「はあ、そうなんですか」

圭はそれで納得したようだった。

かなり無理矢理だったが、話をそらすことには成功したようだった。





「ただいまー。とりあえず、適当に買ってきたよ」

恭介はビニール袋から、おにぎりや弁当類をいくつか取り出して机に並べた。


「それでは食べましょうか、光也さんもどうぞ」

圭にそう言われ、光也はおにぎりを手に取り食べ始めた。


「そういえば……」

おにぎりを食べていると、圭が何かを思い出したかのように言った。


「ん……どうした?」

光也と恭介が疑問の声を上げると、圭は続けて言った。


「今日、授業中に不審者の捜索をしているという人が入ってきて、『見かけない人がいたら報せてくれ』とか言って出ていったんですよ」

「それ……ひょっとして、光也くんのことちゃうか?」

恭介がその言葉に反応して言った。


「ええ、多分そうでしょう。住居の不法侵入で捜索中とか言ってましたし……」

「俺……ここに居て大丈夫なのか?」

光也は不安そうに言った。


「おそらく平気ですよ、ここにはめったに人が来ませんから」

圭は平然と答えた。


「そうか……なら、よかっ――」

光也がほっと一安心した直後、コンコンと扉をノックする音が聞こえてきた。


「!!」

光也は驚き、圭と恭介は顔を見合わせた。


「光也さん、隠れていてください。おそらく来ました……」

「……わかった」

そう言って、光也は物陰に身を潜めた。


「光也くん、そんなところじゃ見つかるで……隠れるんならこっちや」

そう言って、恭介は床をずらした。

すると、そこには地下へ続く階段があった。


「こんなものもあるのか……」

「いざというときの非常用やね、めったに使わんけど。奥に部屋があるから、そこにでも居てくれや」

光也が階段に身を潜めたのを確認すると、恭介は床を元に戻した。


準備ができたのを充分確認し、そして扉を開けた。

そこには、制服を着た警官が立っていた。


「すみません、警察のものですが」

「はい、なんでしょうか?」

「この辺りに不審者が居たという通報がありましてねえ……見ていませんか?」

「いいえ……見てませんが?」

圭は平然と言った。


「それは本当ですか? 実は……ここに最近、普段見たことが無い人が出入りしているということを言われてきたのですが?」

「しかし……見ていませんよ?」

「一応、調べさせてもらいます……よろしいですね?」

圭と恭介の顔に若干緊張の色が混じった。


「えぇ……どうぞ」

その言葉を聞き、警官は部室の中へと入っていった。

警官は部室の中を一通り探したが、光也を見つけることは出来なかった。


「……確かに居ないようですね。何かあったらまた来ます」

そう言って、警官は出て行った。

圭は警官が見えなくなってから、恭介に小声で囁いた。


「今の人、警官じゃないですね……」

「そうなんか?」

「ええ……とりあえず、光也さんのところに行きましょうか。詳しくはそこで話します」

そして、圭と恭介は光也のいる地下室に向かった。





第4話 第6話

BACK