Stray Disonare〜かりそめの舞踏曲〜








プロローグ





21世紀中盤。


ヒトゲノム情報の解読や、偶然の産物により、遺伝子工学の技術が飛躍的に発展した。

その技術により、人間の遺伝子を操作することも可能となった。

それは医学の治療に貢献し、人々の生活を潤した。


だが人は考えた。

その妄想は、人なら当然のものだった。


遺伝子を操作して、より優秀な人間を作り出す――


事実、それは実現した。


生まれくる命。


人して形を成す前――

精子と卵子の段階から、人の手を加える。


遺伝子を操作し、優秀な遺伝子を生まれくる命に受け継がせる。

そうして生まれた命は、人々の期待に応えるものだった。


遺伝子操作人間。


人々は、その技術により、更なる発展を遂げるに見えた。


しかし――


それは、人が迂闊に神の領域に触れてしまった結果か。

それとも、霊長としてのおごりか。

単に技術が欠陥だっただけか。


なんにせよ、それは失敗とも呼べる結果をもたらした。


遺伝子を操作した弊害。

組み替えた遺伝子が変異し、変異型のガンや奇形が発生した。


やはり、人は人としての形を崩してはいけないのか。


遺伝子操作の技術がいくら進歩しても、遺伝子操作人間はけっして完成しなかった。

遺伝子の変異を抑える技術が開発されても、また別の変異型のガンが発生した。


その存在を、神は許そうとしなかったのかもしれない。


優秀な存在が生まれても、それはひどく短命でしかいられない。

人が大人になる時間が、彼らに許された寿命だった。


やがて、遺伝子操作人間に関する技術は禁止され、廃れていった。


しかし、人は力を求める生き物だ。

貪欲なまでに力を欲し、それを我が物にしようとする。


遺伝子操作人間ではない人々は、その超人的な能力に憧れた。


そして――ある計画が秘密裏のうちに進められることになった。

その研究は、ある程度成果を挙げる段階まで進んだ。


しかし――それが人々に貢献されることはなかった。


『ゴッドブレス』により、世界の秩序が崩壊した。

そして、秘密裏に進められていた研究は――人々に知られることなく、消えていった。


――はずだった。





第1章

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