Seeker of existence
「ここは……どこだ? 何でこんなところに居るんだ!?」
周りを見ると、どこかの部屋の中のようだ。
部屋には窓があるが、カーテンは閉まっている。
雨の音がしている。
外は雨だろうか……
「さっきまで、自分の部屋に居たよなぁ……?」
落ち着いて周りを見てみると、ここは自分の通っている高校のようだ。
ただいつもと違うのは、明かりが点いてないためか周囲は暗いこと。
人がいる気配も無く、ただ時計の音と雨の音くらいしか聞こえないことだ。
時計を見てみた。
時計の針は1時をまわったあたりだ、学校は昼休みがちょうど終了したくらい……授業の先生が居てもおかしくはない。
だが、教室には先生も居なければ生徒の姿も一人も見られない。
「さすがに、人が一人も居ないのはおかしいだろ……」
(もしかして……ドッキリか…?)
「さすがにそんなわけは無いよなぁ……」
(とりあえず、誰か人が居ないか探してみるか)
そう思い、光也は廊下に出て……そして廊下の窓から何気なく外を見た。
「なるほどな……これじゃ、人がいるわけないか……」
外は雨雲でわかりにくかったが、うっすらと月のようなものが見えていた。
時計が示していたのは昼の一時ではなく、深夜の一時だったようだ。
(それにしても何で……)
「何で、俺は夜の学校に居るんだ……?」
光也は自分がなぜこういうことになってしまったのか、考えようとした。
「それは、あなたを消すのに人が居ないところのほうが楽だからですよ」
その時、不意にどこからかコツコツコツという足音と共に、質問に答えたような声が響いてきた。
「誰だ!?」
「名乗るほどの者ではありませんよ」
その声は後ろから聞こえてくる。
「いや……名乗る必要が無いと言ったほうが、正しいのかもしれません」
(な、なんだこいつ!?)
そいつは立ち止まった。
「どうせ、あなたは消える運命なんですから……」
光也がおそるおそる振り向くと、そこには仮面をつけた男が立っていた。
「俺を……消す? こ、殺すってことか!?」
「殺すのではありません」
「この世界から、消滅するということです」
(意味わかんねえ!!)
そう言いながら男はナイフを取り出し、徐々に近づいてきた。
「どっちも同じじゃないか!? 何で俺が……」
光也は逃げようとした……だが、逃げようにも足が動かない。
(くそ! マジやべえ!!)
近づきつつある、得体の知れないものへの恐怖なのか……
それとも、別の何かが原因なのか……
しかし、光也にはそんなことを考えている余裕はなかった。
「逃げようとしても無駄ですよ」
(い、いつの間に!?)
仮面の男が正面に立った。
「これで終わりです。消えなさい」
光也には、仮面をつけた男がにやりと笑ったように見え……振り上げられたナイフが、光也に襲い掛かった。
「うわあぁぁっ!!」
光也は目を覚ました。
「……あれ?」
光也は周りを見渡す。
そこは何の変哲も無い、自分の部屋だった。
「なんだ、夢かよ……びっくりした〜」
(それにしても……自分が殺される夢なんて、すげえ嫌な夢だった……)
光也はベッドから起き上がると、隣においてある目覚まし時計を手に取った。
時計の針は8時をまわっている。
「げっ!? 遅刻する!!」
光也は慌てて服を着替え、学校の支度を整える。
(なんか腹が減ったな……台所からパンでも持っていくか)
時計の針は遅刻の危機を訴えていたが、空腹には敵わない。
「これじゃあ、遅刻決定だな……」
ひらきなおってゆっくりと階段を下り、ダイニングへと向かう。
台所にあった食パンを口にくわえようとした所で……気づいた。
いつもと何かが違う。
おかしい。
母さんはいつもならこの時間、食器の後片づけをしているはずだ。
それに見たところ、朝食も俺の分は作られていない……
何でだろう?
パンを手にしたまま、光也は考えに耽っていた。
「きゃあっ!?」
(えっ?)
悲鳴が聞こえた。
光也は悲鳴があがったほうを見る。
するとそこには……
母親が居た。
「母さん……」
文句を言おうとして口を開こうとしたとき、耳を疑うような言葉を聞いてしまった。
「あなた……誰?」
「えっ!?」
何かの冗談だと思った。
しかし、母親が放つ空気は自分の息子へ向けられるようなものではない。
「あなた誰なの!?」
(なっ!?)
語調が強くなった。
それにともなって、母親が冷静さを失っていくのがわかった。
「人の家に無断で忍び込むなんて……まさか泥棒……!?」
母親の顔は、みるみる青ざめていく。
光也が弁解する間もなく……
「きゃあぁー!!」
母親は、ものすごい勢いで家の外へと逃げ出していった。
唖然としたまま、取り残される光也。
「何なんだよ……」
「何が……どうなってるんだよっ!?」
母さんは、俺の顔を見て悲鳴をあげた。
まるで、知らない人を家の中で見たような反応……
(とりあえず、今ここに居るのはまずい……)
たぶん、母親は近所の家へと駆け込んでいるだろう。
警察に通報されるのはまずい。
ここでは、自分は不振人物らしい。
ココニイテハイケナイ……
光也は、直感的にそう思った。
裏口から飛び出し、急いで家から離れる。
(学校に行ってみよう……何か、すごく嫌な予感がする)
光也は考えたあげく、学校へと行くことにした。
母親があれでは、親戚にも同じ対応をされる恐れがある。
「学校に行けば、何かわかるかもしれない……」
不安を感じながら……光也は、学校へ続く道を歩いていった。